高血圧治療薬(概要)

<血圧の話>

血圧は、心拍出量と末梢血管抵抗の積として表される。血圧には収縮期血圧(最高血圧)と、拡張期血圧(最低血圧)がある。
高血圧は大きく2つに分類されます。
1つめは、本態性高血圧症です。これは、明らかな原因がない高血圧のことです。2つめは、二次性高血圧症です。これは、原因となる基礎疾患があって生じる高血圧のことです。基礎疾患としては、腎疾患や、内分泌性の疾患が例としてあげられます。

 

<高血圧治療薬分類>

高血圧治療薬は以下に分類される。
.Ca 拮抗薬
.ACE 阻害薬(angiotensin-converting enzyme)
.AT1 受容体拮抗薬
.直接的レニン阻害薬
.利尿薬
.α1 遮断薬
.非選択的 β 遮断薬
.β1 遮断薬
.α、β 遮断薬
.アドレナリン作動性神経遮断薬
.中枢性交感神経抑制薬
.血管拡張薬

 

Ca 拮抗薬

このタイプの代表的な薬は
・アムロジピン(ノルバスク)
・シルニジピン(アテレック)
・ジルチアゼム(ヘルベッサー)
 などが挙げられます。
◯◯ジピン、ジルチアゼムは Ca2+ チャネル遮断薬です。血管平滑筋の膜電位依存型 L 型 Ca2+ チャネルを遮断することで、動脈を拡張します。動脈が拡張することにより血圧が下がります。Ca2+ チャネル遮断薬は、主に CYP3A4で代謝されます。そのためグレープフルーツジュース(GFJ)などの柑橘類と相互作用し、降圧作用が増強されます。

 

ACE 阻害薬(angiotensin-converting enzyme)

このタイプの代表的な薬は
   ・エナラプリル(レニベース)
   ・カプトプリル(カプトリル)
などが挙げられる
◯◯プリルはACE(angiotensin-converting enzyme)阻害薬です。ACE を阻害することで、アンギオテンシン II 生成が抑制され、血圧が降下します。ACE 阻害剤は、心不全改善作用や、腎臓保護機能もあることが知られています。有名な副作用として、空咳と血管浮腫があります。

 

AT1 受容体拮抗薬

このタイプの代表的な薬は
   ・バルサルタン(ディオバン)
   ・オルメサルタン(オルメテック)
などが挙げられます。
◯◯サルタンは、AT1 受容体を遮断することにより血管拡張が引き起こされて、血圧が降下します。

 

直接的レニン阻害薬

このタイプの代表的な薬は
   ・アリスキレン(ラジレス)
などが挙げられます。
アリスキレンは、直接的レニン阻害薬です。レニンとは、アンギオテンシノーゲンをアンギオテンシン I に変換する酵素です。このレニンの産生を阻害することにより降圧効果を示します。

 

利尿薬

このタイプの代表的な薬は
   ・フロセミド(ラシックス)
   ・ヒドロクロロチアジド(ダイクロトライド)
   ・トリクロルメチアジド(フルイトラン)
   ・スピロノラクトン(アルダクトンA)
   ・トリアムテレン(トリテレン)
   ・エプレレノン(セララ)
などが挙げられます。
フロセミド、ヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジド、スピロノラクトン、トリアムテレン、エプレレノンは利尿薬です。利尿作用により、血液循環量を減らし、降圧効果を示します。

 

α1 遮断薬

このタイプの代表的な薬は
   ・テラゾシン(バソメット)
   ・プラゾシン(ミニプレス)
   ・ウラピジル(エブランチル)
などが挙げられます。
◯◯ゾシン、ウラピジルは、α1 受容体遮断薬です。末梢血管の拡張を引き起こし、降圧作用を示します。副作用として、起立性低血圧があります。

 

非選択的 β 遮断薬

このタイプの代表的な薬は
   ・プロプラノロール(インデラル)
   ・ピンドロール(カルビスケン)
   ・カルテオロール(ミケラン)
などが挙げられます。
プロプラノロール、ピンドロール、カルテオロールは、非選択的β遮断薬です。

 

β1 遮断薬

このタイプの代表的な薬は
   ・アテノロール(テノーミン)
   ・アセブトロール(アセタノール)
   ・メトプロロール(セロケン)
   ・ビソプロロール(メインテート)
などが挙げられます。
アテノロール、アセブトロール、メトプロロール、ビソプロロールはβ1 選択的遮断薬です。β遮断薬は、心臓に働くことで心筋収縮力を低下させ降圧作用を示します。※ロロールがつくのは、β1 選択と覚えると、とっかかりとしてはよいかもしれません。

 

α、β 遮断薬

このタイプの代表的な薬は
   ・ラベタロール(トランデート)
   ・アモスラロール(ローガン)
   ・アロチノロール(アルマール)
   ・カルベジロール(アーチスト)
などが挙げられます。
ラベタ、アモスラ、アロチノ、カルベジロールは、α1 ,β遮断薬です。末梢血管の拡張に加え、心筋収縮力の低下により降圧作用を示します。

 

アドレナリン作動性神経遮断薬

 

このタイプの代表的な薬は
   ・レセルピン(アポプロン)
などが挙げられます。
レセルピンは、アドレナリン作動性神経遮断薬です。交感神経節後終末において、シナプス小胞内へのカテコラミンの取り込みを阻害させることでノルアドレナリンを枯渇させ、α、β遮断作用と同様の作用を引き起こします。副作用のため、使用頻度は少なくなっている薬です。

 

中枢性交感神経抑制薬

このタイプの代表的な薬は
   ・クロニジン(カタプレス)
   ・メチルドパ(アルドメット)
   ・グアナベンズ(ワイテンス)
などが挙げられます。
クロニジン、メチルドパ、グアナベンズは、中枢性交感神経抑制薬です。延髄のα2 受容体を刺激することで交感神経活動を抑制させ、降圧作用を示します。

 

血管拡張薬

このタイプの代表的な薬は
   ・ヒドララジン(アプレゾリン)
などが挙げられます。
ヒドララジンは血管拡張薬です。血管平滑筋を弛緩させることにより血管を拡張させることで降圧作用を示します。