ペランパネル（商品名：フィコンパ）

ペランパネル（商品名：フィコンパ）

 

脳内では、神経細胞によって電気信号のやり取りが行われています。ただ、人によってはこのときの「脳内での電気興奮」に異常を生じることがあります。その結果、痙攣（けいれん）や意識消失が起こります。こうした病気をてんかんといいます。

 

 

そこで、神経の過剰な興奮を抑えることによって、てんかん発作が起こらないように治療する薬としてペランパネル（商品名：フィコンパ）があります。ペランパネルはAMPA受容体阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 

　ペランパネル（商品名：フィコンパ）の作用機序
私たちが物事を考えるとき、神経細胞で電気興奮が起こっています。電気興奮がなければ、腕を動かしたり何かを記憶したりすることはできません。

 

 

ただ、このときに「脳内に異常な電気興奮の嵐」が起こってしまうとどうでしょうか。全身の筋肉がビクッとけいれんすることにより、全身に症状が表れるようになります。これを強直間代発作といいますが、かなり重篤なてんかん症状になります。

 

 

表れる症状はけいれんだけではありません。脳の電気信号がうまく伝わらないことによって、意識消失を引き起こすこともあります。寝ているだけのように思われることもありますが、実際はてんかんによって意識が一時的になくなっていることがあるのです。

 

 

これら神経での電気信号のうち、興奮性の神経伝達物質としてグルタミン酸が知られています。つまり、グルタミン酸が神経細胞に働きかけることによって、電気信号が起こるのです。

 

 

ただ、てんかん患者では脳内の電気興奮が異常に乱れています。より詳しくいうと、てんかん患者ではグルタミン酸が過剰に放出されることによって症状が起きています。

 

 

グルタミン酸が放出されると、これらはグルタミン酸受容性に結合することで興奮を伝えていきます。正常な興奮なら問題ないですが、てんかん患者ではグルタミン酸の放出によって「異常な興奮として電気興奮が伝えられる」ようになります。

 

 

そこでグルタミン酸の働きを抑えることによって、神経で起こる異常な電気興奮を鎮めることができれば、てんかん症状を抑制できることがわかります。

 

 

グルタミン酸受容体にはいくつかの種類があります。その中でも、てんかんで生じる「異常な電気信号の最初の立ち上がり」で問題になりやすいのがAMPA受容体です。要はAMPA受容体へグルタミン酸が結合することで、異常な電気信号が発生するようになるのです。

 

 

そこで、AMPA受容体を阻害することによって、グルタミン酸による最初の異常興奮が起こらないように働きかけることができれば、てんかん症状を抑制できることが分かります。

 

このような考えにより、グルタミン酸の働きを抑制することでてんかん症状が起こらないように調節する薬がペランパネル（商品名：フィコンパ）です。

 

 

治療薬の中でも、ペランパネル（商品名：フィコンパ）は非競合阻害薬に分類されます。

 

 

「グルタミン酸が結合する部位」に対してグルタミン酸の代わりにくっつくことで、グルタミン酸の働きを阻害する場合は競合阻害薬になります。ただ、ペランパネル（商品名：フィコンパ）は「グルタミン酸の結合部位とは異なる場所」に結合することにより、受容体の形を変えることでグルタミン酸の働きを阻害します。

 

ペランパネル（商品名：フィコンパ）の特徴
てんかんはその種類によって大きく「部分てんかん」と「全般てんかん」の2つに大別されます。部分てんかんは患者全体の約6割であり、残り約4割は全般てんかんです。

 

 

脳内での電気異常が一部に限定される場合、部分てんかん（部分発作）になります。この場合、「手がぴくぴく動く」「光のチカチカが見える」など発作部位によって症状が異なります。てんかんを発症したとしても、意識消失が必ずしもあるわけではありません。

 

 

一方、全般てんかんでは異常な電気興奮が脳全体に起こります。発作が起こった直前から意識を失ったり、けいれん症状が表れたりすることがあります。

 

 

こうした全般てんかんの中でも、特に問題になりやすいのが強直間代発作です。体が硬直して倒れ、意識がなく全身がけいれんするという症状です。全般てんかんのうち、約6割（てんかん全体では約2割）の患者さんで強直間代発作のリスクがあります。

 

 

なお、部分発作から全般てんかんへ移行することがあり、これを二次性全般化発作といいます。

 

 

そこでペランパネル（商品名：フィコンパ）を投与することによって、「難治性の部分発作」や「難治性の強直間代発作」を優位に抑制できることが臨床試験で明らかになっています。

 

 

他の抗てんかん薬で効果が十分でない場合、ペランパネル（商品名：フィコンパ）が活用されます。治療の難しいてんかん患者への選択肢として、ペランパネル（商品名：フィコンパ）が存在するのです。

 

 

ペランパネル（商品名：フィコンパ）の主な副作用としては、浮動性めまい、傾眠、易刺激性（少しのことでイライラすること）が知られています。脳の電気興奮を抑える作用機序であるため、めまいや傾眠などが表れやすくなるのです。

 

 

このような特徴により、難治性のてんかん患者に使用することによって、部分発作や強直間代発作を軽減する薬がペランパネル（商品名：フィコンパ）です。