アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬:ドネペジル(商品名:アリセプト)
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬:ドネペジル(商品名:アリセプト)
認知症と言っても、認知症は大きく分けて3種類あります。この中でも、最も患者数が多くて有名な疾患としてアルツハイマー型認知症があります。
単なる物忘れなら良いですが、認知症による物忘れは病気です。そのため、治療しなければいけません。この時の治療として薬が使用され、世界初のアルツハイマー型認知症治療薬としてドネペジル(商品名:アリセプト)があります。
アルツハイマー型認知症治療薬(コリン仮説)
脳が記憶を行う上で、神経伝達物質の存在が必要不可欠となります。そして、このような脳の記憶に関わる神経伝達物質としてアセチルコリン(ACh)があります。
それでは、アルツハイマー型認知症の患者さんの脳がどのような状態になっているかと言うと、このような患者さんでは脳内での神経伝達物質が減少しています。より詳しく言えば、記憶に関わる脳内のアセチルコリンの量が減っています。
前述の通り、アルツハイマー型認知症では「脳にシミのような斑点ができる老人班の形成」や「神経細胞の中に糸くずのようなものが蓄積する神経原線維変化」などが起こっています。これら脳の神経細胞が変化することにより、アセチルコリン量が減ってしまいます。これが、コリン仮説です。
コリン仮説に基づいて開発されたアルツハイマー型認知症治療薬がドネペジル(商品名:アリセプト)です。
ドネペジル(商品名:アリセプト)の作用機序
このように、「アルツハイマー型認知症ではアセチルコリンが著しく減少している」という仮説に基づいて治療薬が開発されています。
アルツハイマー型認知症の患者さんは脳内のアセチルコリン量が減少しています。そのため、薬によってアセチルコリン量を増やすことができれば、アルツハイマー型認知症を治療することができます。
脳内のアセチルコリン量を増やすためには、酵素の阻害を考えることが重要となります。そして、アセチルコリンを分解する酵素として、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)があります。
脳内において、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)が存在するために、記憶に関わる神経伝達物質アセチルコリンが分解されてしまいます。そのため、このアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を阻害すれば、記憶に関わるアセチルコリン(ACh)の分解を抑えることができます。
この結果としてアセチルコリン量を増やし、アルツハイマー型認知症を治療します。
このように、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)を阻害することによってアルツハイマー型認知症治療薬の症状を改善する薬としてドネペジル(商品名:アリセプト)があります。
ドネペジルは病気の症状を改善するわけではなく、あくまでも「病気の症状を遅らせる薬」になります。そのため、この薬を服用していたとしても、少しずつ認知症の症状が進行してしまいます。それでも、この薬によって多くの人が人間らしく生きることができるようになった事は確かです。
ドネペジル(商品名:アリセプト)のように、世の中には「病気を治さない薬」も存在します。病気を治すのではなく、症状の進行を遅らせるのです。
そのため、薬を服用している時にたとえ病気の症状が改善しなかったとしても、薬の服用を止めてしまってはいけません。薬をやめた瞬間から、一気に認知症の症状が悪化してしまうからです。なお、ドネペジル(商品名:アリセプト)は日本人が開発した、世界で最初のアルツハイマー型認知症の治療薬です。
レビー小体の治療薬
認知症には、アルツハイマー以外にも脳梗塞によって発症する「脳血管性認知症」やレビー小体と呼ばれる異常物質によって発症する「レビー小体型認知症」が知られています。その中でも、レビー小体型は認知症の約1割を占めます。
レビー小体型では、強い幻覚を生じることが特徴です。また、手のこわばりなど、パーキンソン病のような症状が表れます。そこで、レビー小体型認知症の進行を遅らせるときにも、ドネペジル(商品名:アリセプト)が使用されます。
レビー小体では、「薬に対して敏感である」という特徴があります。そのため、ドネペジルを使用して病気を治療するにしても、その多くは少量投与によって副作用が出ていないか確認しながら対処していきます。
これらの特徴により、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など、さまざまな認知症の症状を遅らせるために使用される薬がドネペジル(商品名:アリセプト)です。